Le Fantasque

書きかけメモ帳

映画「デメテル号最期の航海」

まあ、案の定盛り上がらない

「ドラキュラ」第七章のデメテル号の航海日誌を元にして膨らませた映画。
原作はそんなボリュームないし、謎の怪異が表れて船員が死んだり狂ってゆくホラーだけど、こっちのはモンスターパニックホラーかなぁ。
船の描写、運んでくるジプシーの描写、あたりはまあ興味深いんだけど、家畜が全部食われて、積み荷の中にいた謎の女が出てきたあたりからが微妙。
謎の女アンは、ドラキュラの航海中の餌として積まれたんだけど、特にこう、最後にドッキリするような何かがない。万事こう一本調子というか……盛り上がらないというか。
そう、家畜食われるまではまぁ、いいんだけど、そもそも家畜の血全部一晩で食うあたり大分暴食だよなこのドラキュラ。やり過ぎ感がすごい。

今どきのホラーとしちゃ、明らかに怪しい積み荷を調べるのが遅かったり、積み荷に入ってる奴が原因だとわかった後も、積み荷を捨てたりとか有効な対策とらないあたりが大分微妙。
いや普通捨てない?
夜に調べてドラキュラ自体は積み荷の中にいないことが分かっても昼間には箱に帰るだろうから、その時狙えばよかったのでは?とかも思うし

ドラキュラの容姿はヴォルデモードとゴラム足して蝙蝠羽くっつけたような感じで、腕に羽付いてて飛べる雑魚モンスターといった感じ。まぁ、なんというか、パニックホラーで主人公たちにショットガン一発で撃ち落とされる有象無象の一体という感じ。怪物王女に出てきた赤錆町の吸血鬼。アウターゾーンの吸血鬼。そんな感じ。
怖いっつーかキショイ。
あんまり強そうな感じもしないし、まぁ、力と飛行能力はあるから強いんだけど。あんま視覚的に脅威ってのが分かりづらいんすよね。
モンスター映画だと人間側が強いからこの程度だと弱く感じるけど、これに登場するのは普通の人間ばっかだから十分脅威ってことなんだろうけど。

それにしてもドラキュラの描写も

  • オールバック紳士
  • 長髪紳士
  • 蝙蝠モンスター

といろいろあるけど、この蝙蝠モンスター型のはどこで生まれたんだって感がすごいな。アウターゾーンでもこの姿で出てるってことはある種市民権得てるんだろうけど。
オールバック紳士はもう、アメリカ映画「魔人ドラキュラ」が明確に元って分かるからわかりやすいんだけど。
長髪も、元ネタのヴラド・ツェペンシュを元にしてるんだろうなってのは何となく想像つく。
蝙蝠をでっかくして手足を人間風にした蝙蝠モンスターはなんなん?どこが元ネタ?「吸血鬼ノスフェラトゥ」のハゲが元か?あいつに翼なんかないぞ。
紳士ぶっているが中身は化け物っていう描写したいんならぴったりな容姿ではあるが……

ストーリー

ある嵐の日、イギリスの海岸に船が座礁。調べに出た警備隊が船を調べたところ乗組員は死んでおり、航海日誌が残されていた。

2週間前……
ルーマニアのジプシーたちが荷物を馬車で運んでいる。積み荷は木箱。そして、木箱の上にはドラゴンの紋章。
船に付いた荷物はデメテル号に積み込まれるが、積んでいる最中に現地で雇った男がその紋章を見てパニックを起こす。あれは不吉だこんな船には乗っていられないと逃げ出してしまう。
船長の孫トビーを助けたことと人員に空きができたことでデメテル号に乗れることになった主人公の黒人船医。
デメテル号は荷物を積み込み出航するが、それを見ていたジプシーたちは十字を切った。

船の案内をされる主人公。船長室、家畜置き場、食堂。船員ともある程度仲良くなった頃事件が起きる。
船が揺れ、積み荷がズレたことで、中の土がこぼれ、その中から女が出てきた。感染症を発症していると判断した主人公は輸血を行う。
そして次の夜、船倉に入っていた犬が食い殺され、更に家畜まで血を吸われて殺されていた。
船員たちは女の仕業ではと疑うが体調から無理だと判断される。
そして、竜の紋章の付けられた箱が開き、次の犠牲者が出る。


まぁ、あんまわかりきったことに時間かけたくないのか、割とあのゴラムみたいな姿で船倉を這いまわるドラキュラの姿は割とよく出てきますね。意味あるのか知らんけど。どっちにしろあとの方にまで引っ張って、結局あんな分かりやすい怪物が出てきたらがっかりしそうだしな。
ドラキュラと直接対決する場面はあるものの戦力差があってどうにもなってない。力で圧倒できるって分かってるのにえらく用心深いな。
そういや、原作でも割と謎だった「なんで自分の棺桶運んでる船の船員を殺しまくるのか?船を操作する人が死んだら目的地までたどり着けなくない?」という疑問にある程度、回答を示しているといえるかもしれない。ドラキュラは食事用にアンを連れてきていたのだが、事故によりアンが解放されてしまい、腹をすかせたドラキュラは家畜や人間の血を吸うことになってしまったという。
まあ、それにしたって食い過ぎだよね。アンはそんなに造血細胞が特殊で飲んでも飲んでも血を生成できる特殊体質だったのか?
戦闘に関しては、戦力無効化するためにドラキュラが手を打っているうえに、そもそも鍵のかかった部屋でも平気で侵入できる奴なんでホント一方的であんまおもんない。
結局マストの固定具を外してサンドイッチにしたのが唯一のダメージといえそうだけど、それも結局イギリス着いた後に脱出してたしな。普通に。

でもって、船を捨てて脱出していた主人公は、ドラキュラの買ったカーファックス屋敷に向かうが、途中であの棺の中で見た杖を持つ男と遭遇し、ドラキュラ側も主人公に着けた首筋なぞって挑発したことから、
ドラキュラを追って主人公の追走劇が始まるというところで終わり。ここいる?
続編出来ねーと思うんですけどこれ?続編やるの?むしろ続編が本編って考えなんだろうか。それにしてもなんで今更ドラキュラ関連の話をやり始めたんだろう。
来年「吸血鬼ノスフェラトゥ」のリメイクの映画が出るからか?


それにしても、吸血鬼化した人間たちは太陽の日を浴びると燃え上がるとかいう独自設定追加したり、船員のキャラ追加してる割になんか盛り上がらないのなんでなんだろうね。
太陽光で灰になるとかじゃなくて燃えるとかどんな物質で構成されてんのか。
それはいいけど、もうここまで来たらあのドラキュラぶっ倒しちゃえばよかったのにな。いやぁ普通にありでしょ。ムルナウの「吸血鬼ノスフェラトゥ」みたいに日光で灰になる設定追加してんなら、あそこに乗ってた怪物はドラキュラじゃなくてその眷属とかにしてもよかったしさ。アンが実はドラキュラだったとか。まぁいくらでもやりようあるのにね。なんのどんでん返しもなかったのがなんなん?って気がする。
まぁ上映館が妙に少ないのも納得といえば納得。